カダルカフェヒロサキ(Kadaru@Cafe HIROSAKI)

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45歳でUターン、学生街のブックカフェ店主に ─「けやぐの家」小林達也さん(平川市出身)

45歳でUターン、学生街のブックカフェ店主に─「けやぐの家」小林達也さん(平川市出身)

いくつもの大学や高校が立地する学都・弘前市。学生向けアパートが軒を連ねる桔梗野の住宅街の一角に、2017年12月にオープンしたブックカフェ「けやぐの家(え)」があります。以前は学生アパートだった店舗には、漫画や小説など約7000冊の蔵書、電源やWi-Fiを備えた机、さらには電子ドラムなどの楽器などもあり、そのゆったりとした環境に地元の学生たちが集まってきます。

「完全に個人の趣味で集めた本なので、大手マンガ喫茶にはないマイナーなマンガもあります。またマンガだけではなく、書籍、写真集、画集、雑誌が多いのも特徴です」

そう語るのは、店主の小林達也さん(50)。弘前市のお隣・南津軽郡平賀町(現・平川市)出身で、弘前工業高校を卒業。28年間勤めた会社を2017年に辞め、東京から高校時代を過ごした弘前の街へUターンしてきました。そんな小林さんに、移住・起業の経験を振り返ってもらいました。

増え続ける「積読」に危機感

増え続ける「積読」に危機感

小林さんは高校卒業後に上京し、移住前は大手メーカー系列の企業でシステムエンジニアとして働いていました。

「SI(システムインテグレーション)会社でシステムエンジニアをしていました。メインとなるお客様システムの運用・保守・保守開発を主軸に、引き合いがあったお客様への提案・開発を行っていました。Windows、UNIX、Oracle、SQL Server、JP1等が得意分野で、RFID、IoT等にも携わっていました」

安定した会社に勤め、申し分のないキャリアを積んできた小林さん。なぜ定年退職を待たずに、青森県へのUターンと異業種での起業を決意したのでしょうか。

「特に仕事への不満もなく、人間関係も良好でした。しかし、日々増えていく積読(つんどく)に『このまま仕事を続けていたら、読み切れないまま死んでしまうのではないか』と不安になりました。ちょうど45歳で早期退職ができるタイミングでもあったので、実家に戻って隠居生活に入ろうと思いました」

積読とは、入手したのに読まないまま本がたまっていく状態のこと。もともと読書が好きで仕事帰りにはよく書店に立ち寄っていたが、読み切れぬまま積み重なっていく本の山に焦りを覚えたといいます。当時交際中だった奥様に思いを打ち明けたところ、「これだけ本があるんだったら、家でブックカフェでもやってみたら」と逆に提案されました。
会社員時代は、それなりの収入があったといいます。不安定になる生活を心配した地元の母親からは反対されましたが、「とにかく心配しないで応援してくれ」と物件購入や改装工事を進めていきました。その熱意が通じ、母も開業準備を手伝ってくれるようになったそうです。

コンセプトは友達の家

 

コンセプトは友達の家

店名にある「けやぐ」とは、津軽弁で「友達」を意味します。コンセプトの背景には、小林さんの原体験があります。

「かつて、いとこや近所の先輩に知らないマンガを教えてもらったことや、学校帰りに友人が遊びに来てマンガを読んだりテレビを見たりしてダラダラしていたことを思い出し、『友達の家』というコンセプトが思い浮かびました。これまで自分が蓄積したものを若い人たちに活用してもらいたいと考えました」

その気持ちは、店の仕組みにも現れています。

「自分が何時間でもいられる店にしたかったので、ゆったりした席で、Wi-Fiと電源をたっぷり用意しました(1人あたり2~4口)。また、(一般的な漫画喫茶のように)時間制ではなく、飲食代金のみとしています。コーヒーポット(カップ3杯分で600円)に、甘菓子(400円)をプラスするのが、おすすめの過ごし方です」

コンセプトは友達の家

コンセプトは友達の家

 

快適な時間には、開店を支援してもらった青森市の和田珈琲による特製コーヒー「読書ブレンド」が豊かな香りを添えています。お客さんにとことん寄り添う小林さんの姿勢は、確実に学生たちにも届いています。

「大阪の大学を目指し、よく勉強しに来ていた男の子がいました。志望校に合格した時、真っ先に報告しに来てくれたのがうれしかったですね」

 

家賃は安いが光熱費は要注意

今なお続くコロナ禍には苦労もあります。もともと15人と多くはなかった席数を、席の間隔を開けるため10人程度に減らしました。満席を理由に入店を断らざるを得ない、心苦しい場面が続きます。経営も決して楽ではないといいます。
しかし、お店について語る声は弾んでいます。青森県への移住を考える人には「家賃は東京より安いですが、光熱費を考えるとそれなりのお金になります。特に冬はご注意を!」と、アドバイスを送っています。
年を取るにつれて、友人宅でのんびり過ごす体験からは遠ざかってしまいます。店には、学生だけでなく社会人の訪問者も少なくないそうです。「けやぐの家」は、まさに友達と時間を忘れるまで過ごした懐かしい時間を再体験できる場所。ローカル線に乗って「友達の家」を訪ねてみてはいかがでしょうか。

けやぐの家

 

【けやぐの家(え)】
所在地:青森県弘前市桔梗野5丁目15-8
アクセス:弘南鉄道大鰐線 弘前学院大前駅または弘高下駅から徒歩約10分
営業日:火~金曜日 14:00~21:00、日曜日 12:00~21:00
定休日:毎週月・土曜日
Instagramアカウント:@keyagunoe
Twitterアカウント:@keyagunoe

※画像提供:小林達也さん
※本記事の掲載内容は2021年12月時点の情報です。

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